古民家の平面図で、座敷に「客席」、台所に「厨房」、次の間に「物販の棚」と書き込んでいきます。部屋の名前を書き換えるだけでも、建物は法律の上で「住宅」から「店舗」へ変わります。こうした使い道の切り替えを、建築基準法では用途変更と呼びます。
書き込んだ部屋の床面積の合計が200㎡を超えるかどうかで、建築基準法の確認申請が必要かどうかが分かれます。国土交通省は2026年9月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」の第5版を公表し、検査済証のない建物の調べ方を示しました。2025年4月からは、木造2階建ての大規模な改修にも建築確認が必要になっています。
古民家を店舗や事務所に変えるときの基準と手続きを、建築基準法・消防法・都市計画法・保健所・条例の順に整理し、設計で扱い方を決める7ステップにまとめました(2026年9月時点)。
第1章 古民家を店舗に用途変更するとは?建築基準法で確認申請が必要になる3つの条件

古民家を店舗として使うと、建築基準法上の扱いが変わります。確認申請の要否は、変更後の用途、その部分の床面積、類似の用途かどうか、の3つの条件で決まります。
1-1. 用途変更とは|住宅だった古民家を飲食店・物販店・事務所として使うときの法律上の扱い
用途変更とは、申請書の名前ではなく建物の使い道を変えること自体を指し、手続きは建築基準法第87条に定められています。
建築基準法の別表第1(4)項と施行令第115条の3では、飲食店や物品販売店を特殊建築物(不特定多数が使うため防火・避難の基準が厳しい建物)としています。物品販売店は、その部分が床面積10㎡以内なら除かれます。一戸建ての住宅と事務所は、特殊建築物に当たりません。美容室などは列挙にないため、本記事の「店舗」は主に飲食店と物販店を指します。
1-2. 店舗部分の床面積が200㎡を超えると確認申請|2019年の改正で100㎡から緩和
建築基準法第87条第1項により、用途を変えて特殊建築物にし、その部分の床面積の合計が200㎡を超える場合に確認申請が必要です。国土交通省の改正法の概要によると、2019年6月25日の施行で100㎡超から引き上げられた基準です。
判断に使うのは延べ面積ではなく、店舗として使う部分の床面積の合計です。説明用の例では、2階建ての古民家で1階の120㎡だけを飲食店にすれば200㎡以下、1・2階の合計220㎡なら200㎡超です。住宅は施行令第137条の18の類似の用途に含まれないため、店舗への変更は該当しません。
1-3. 200㎡以下の「手続き不要」は「基準なし」ではない|消防同意がなくても残る建築基準法・消防法の義務
国土交通省の通知(国住指第661号、令和元年6月24日)は、小規模な用途変更で確認申請や消防同意が不要でも、建築基準法令と消防法令の遵守は従前と変わらないとしています。消防同意は、建築確認で消防長などが防火の面から同意する手続きです。国土交通省の説明会資料(2025年11月更新)も、手続きの要否と法適合は別だと説明しています。
200㎡以下では役所の審査が入らない分、基準に合っているかを確かめる役目が設計する側に移ります。
第2章 検査済証のない古民家を店舗へ用途変更する場合|既存不適格と現況調査ガイドラインの考え方
古い古民家には、建築時の書類がなく今の基準にも合わないものがよくあります。その場合の用途変更の考え方を整理します。
2-1. 確認済証・検査済証がない古民家が多い理由と、用途変更で問題になる場面
確認済証(工事前に計画の適合が確認された証明)や検査済証(工事後の検査に合格した証明)は、建築基準法の施行(1950年)より前の古民家にはそもそも交付されていません。その後の建物でも、残っていないことがあります。200㎡超の用途変更で確認申請をするなら、当時の法令への適合を示す材料が要ります。ただし国土交通省の説明会資料は、検査済証がないだけで直ちに違反建築物としての措置が要るわけではないとしています。
会社概要の事業内容に古民家再生と店舗等の工事を並べる中邑工務店のような工務店であれば、木組みの傷みを確かめながら、店舗の基準の当てはめ方を同じ計画で検討できます。
2-2. 既存不適格と違反建築物の違い|用途変更で今の基準に合わせる規定・合わせなくてよい規定
既存不適格(建築時は適法でも、法改正で今の規定に合わなくなった建物)は、違反建築物(当初から違法な建物など)とは区別されます。建築基準法第87条第3項と説明会資料の整理では、既存不適格の建物を用途変更すると、防火・避難・内装・用途制限など、用途に応じた規定を今の基準に合わせます。一方、構造(耐震)のように用途によらない規定は、用途変更だけでは対象になりません(7-4)。
増築や大規模の修繕・模様替を伴えば、別の枠組みで今の基準がかかります(3-5)。改修時の考え方として、2024年4月の改正で、工事をしない部分は内装制限などを合わせなくてよい場合もあります(改正法制度説明資料、2024年9月)。
2-3. 国土交通省「既存建築物の現況調査ガイドライン」第5版(2026年9月)で進める調査の流れ
国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」は、検査済証のない建物などを増築・用途変更する際の法適合の調べ方を示すものです。2024年12月の第1版に続き、2026年9月に第5版が出ました。検査済証に関する平成26年(2014年)の旧ガイドラインは、2025年4月1日付でこれに一本化されました。
調査は次の順に進みます。
- 書類の確認
- 現地調査と報告書の作成
- 計画と確認申請書の作成
図面のない古民家では実測から始まるため、設計前の期間が長くなります。ガイドラインは、用途変更に完了検査がなく検査済証が交付されないことも明記しています。
第3章 建築基準法の壁|古民家の店舗用途変更で確認したい設計上の5つの規定

古民家を店舗にする設計で特に効く、建築基準法の5つの規定です。面積にかかわらずかかるものもあります。
3-1. 用途地域|第一種低層住居専用地域では店舗部分50㎡以下の兼用住宅に限られる
用途地域(建てられる建物の種類を地域ごとに決めた区分)の制限(建築基準法第48条・別表第2)は、第87条第2項により用途変更にもかかります。
- 第一種低層住居専用地域: 延べ面積の2分の1以上が住まいで、店舗などの部分が50㎡以下の兼用住宅(住まいと店舗・事務所を兼ねる住宅)に限る(日用品店・食堂・喫茶店・事務所など)
- 第二種低層住居専用地域: 日用品の販売店・食堂などで150㎡以内・2階以下
- 第一種中高層住居専用地域: 物販店・飲食店などで500㎡以内・2階以下
住宅地の古民家では、店にできる面積が用途地域で先に決まることがあります。
3-2. 厨房の内装制限|飲食店の火を使う部屋は面積にかかわらず準不燃材料で仕上げる
建築基準法第35条の2により、住宅以外の建物で火を使う調理室の壁と天井は、面積にかかわらず準不燃材料(燃え広がりにくい材料)で仕上げます(耐火構造の建物などを除く)。耐火・準耐火建築物以外では、店舗部分が合計200㎡以上になると客席の壁・天井も内装制限の対象です。
土壁や板壁、煤けた梁を厨房で見せたい場合は、間仕切りの位置で仕上げを変える範囲が決まります。面積区分と届出期限は、[富山で店舗をつくるときの内装制限と届出期限の整理]{.underline}で整理しています。
3-3. 非常用照明と避難の経路|客席になる座敷に求められる設備
施行令第126条の4は、店舗の居室と地上への通路に、面積にかかわらず非常用照明(停電時に避難経路を照らす照明)を求めています(避難階の一部の居室などを除く)。続き間の客席は出口が遠く建具で仕切られるため、照明と通り道は建具の開き方とあわせて決めます。
3-4. 耐火建築物にする義務(法27条)|木造2階建ての古民家の2階を客席にする場合
建築基準法第27条第1項は、3階以上を店舗に使う場合などに耐火建築物等を求めますが、2019年施行の改正で階数3・延べ面積200㎡未満の建物は除かれました。2階の店舗部分500㎡以上、合計3,000㎡以上も対象です。木造2階建ての古民家で求められる場面は限られますが、2階の客席は4-3の消防の条件にかかわります。
3-5. 2025年4月の改正|屋根・柱・壁を過半にわたって直すと、用途変更とは別に確認申請
国土交通省によると、2025年4月から、新2号建築物(2階建ての木造建物などの区分)の大規模の修繕・模様替にも確認申請が必要です。主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)の一種以上の過半を直す工事が当たり、平屋で延べ200㎡以下の新3号建築物(この確認申請が要らない小規模な区分)は対象外です。
説明会資料の整理では、これは用途変更の確認申請(200㎡超の特殊建築物にする場合)とは別の根拠で判定されます。店舗部分が200㎡以下でも、床組や屋根まで大きく直せば確認申請が必要になり得ます。改修の範囲は、早い段階で特定行政庁(建築確認を扱う自治体)に確かめます。
商業施設などの建築で、新築に加えてリノベーションや耐震補強も扱う中邑工務店のような工務店であれば、改修が過半に届くかを工事の中身から見きわめて計画を組めます。
第4章 消防法の壁|古民家を店舗に用途変更するときの消防用設備と届出4つ

消防法は建築基準法とは別に、200㎡以下の店舗にも設備と届出を求めており、その要点は4つです。
4-1. 住まいと店舗の併用はどう扱われる?店舗部分が50㎡以下なら一般住宅
消防庁の通知(昭和50年4月15日 消防予第41号ほか)は、住まいと店舗の併用を次のように扱います。
- 店舗などが住まいより小さく、かつ50㎡以下:一般住宅
- 店舗などが住まいより大きい、または50㎡超:店舗、または複合用途防火対象物(複数の用途を持つ建物)
- 両方がおおむね等しい:複合用途防火対象物
用途地域の「50㎡」(3-1)とは別の法律の数字です。消防法施行令別表第1の番号も、飲食店(3)項ロ・物販店(4)項・事務所(15)項と、建築基準法とは異なります。
4-2. 消火器|火を使う設備のある飲食店は2019年10月から広さにかかわらず設置
消防法施行令第10条第1項の改正で、2019年10月1日から、こんろなど火を使う設備のある飲食店は、延べ面積にかかわらず消火器具が必要です。調理油過熱防止装置などがあれば除かれますが、立ち消え防止装置は当たりません。それ以外の飲食店・物販店は延べ150㎡以上、事務所は300㎡以上で必要です。
4-3. 自動火災報知設備と誘導灯|300㎡未満でも2階の客席と階段の数で必要になる場合
消防法施行令第21条第1項は、自動火災報知設備(煙や熱を感知して知らせる設備)を、店舗は延べ300㎡以上、事務所は1,000㎡以上で求めています。300㎡未満でも、店舗部分が避難階(地上に出られる階)以外にあり、屋内の直通階段が1つの場合などは必要です。その際は条件により、特定小規模施設用自動火災報知設備(配線工事を抑えた小型の機器)も使えます。
階段が1か所の古民家で2階を客席にすると、この条件にかかりやすくなります。誘導灯(避難口などを示す照明)も原則必要ですが、見通しのよい小規模な1階の店舗などは省略できる場合があります。
4-4. 防火管理者・防火対象物使用開始届・厨房の排気ダクト|富山市の条例で定められた届出と基準
消防法施行令第1条の2第3項により、店舗は従業員を含む収容人員30人以上、事務所は50人以上で防火管理者(防火の計画や訓練を担う責任者)を選び、届け出ます。富山市火災予防条例第71条は、使用開始の7日前までに防火対象物使用開始届を出すと定めています(市の案内、2025年3月10日更新)。同条例第5条は、厨房の排気ダクトを不燃材料で可燃物から10cm以上離すことや、油煙の出るフードへのグリス除去装置(油をこし取る装置)の設置などを定めています(例外あり)。
他の市町村の条例にも同様の定めがあります。梁の近くを通るダクトの経路は、厨房の位置とあわせて決めます。有料老人ホームの新築で、消防法などの要件を踏まえて配置や動線を計画した中邑工務店のような工務店では、要件を配置の段階から織り込む進め方を古民家にも当てはめられます。
第5章 都市計画法・保健所・条例|建築基準法の外にある、古民家の店舗用途変更の手続き3つ
建物の基準とは別に、土地の区域・営業の許可・地域の条例の3つにも手続きがあります。
5-1. 市街化調整区域の古民家|都市計画法の許可と2016年からの運用の見直し
市街化調整区域(建築や用途変更が原則として制限される区域)で用途を変えるには、都市計画法第43条などによる都道府県知事(中核市などは市長)の許可が必要です。国は2016年12月から、空き家の古民家などを観光振興の飲食・宿泊施設などに変える用途変更を、地域の実情に応じて許可して差し支えないとしました(開発許可制度運用指針)。
富山市には、線引き(市街化区域と市街化調整区域に分けること)のある富山高岡広域都市計画区域と、線引きのない富山南都市計画区域があります。富山県の資料(2025年3月31日現在)では、後者は2016年に大沢野・大山・八尾の区域を統合したもので、市街化調整区域はありません。
5-2. 飲食店営業許可と建築の手続きの順番|保健所への相談は工事の前に
2021年6月に施行された改正食品衛生法で、営業許可は32業種に再編されました(厚生労働省)。富山市保健所の案内(2026年1月19日更新)は、施設基準に合わないと許可が出ないため、工事の前に保健所へ相談するよう求めています。施設基準がかかわる厨房は、内装制限やダクト(3-2・4-4)と同じ場所のため、建築・消防・保健所の確認は同じ図面で進めます。
5-3. 富山県民福祉条例と歴史的建築物の条例|用途変更も対象になる地域の決まり
富山県民福祉条例(2026年9月時点)のバリアフリー基準は用途変更も対象で、用途変更部分が飲食店300㎡超、物販店500㎡超、事務所3,000㎡超なら、着工30日前までに届け出ます。
建築基準法第3条第1項第3号と国土交通省のガイドライン(2018年3月)では、条例で保存措置がとられ、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定した建物は、法の適用を除外できます。伝統的建造物群保存地区でも、条例で制限を緩和できます(法第85条の3)。ただし、古民家というだけで除外されるわけではありません。
第6章 申請から施工までの流れ|古民家の店舗用途変更を進める7ステップ

第1〜5章の手続きを、計画から開業までの順に並べ、200㎡超かどうかの違いも添えます。
6-1. STEP1〜2|用途と面積を決め、建物と土地の現況を調べる
- STEP1:店舗の範囲と床面積、土地の区域を整理する
店舗部分が200㎡を超えるか、用途地域と市街化調整区域に当たるかを確かめます。用途地域の制限は規模にかかわらずかかります。 - STEP2:書類の有無を確かめ、現況を調べる
検査済証や図面がなければ、現況調査と図面の作成から始めます。
6-2. 事前相談・設計・申請を同じ図面で進める|STEP3〜5
- STEP3:各窓口との事前相談を行う
特定行政庁・消防・保健所と計画段階で協議します。確認申請が不要でも、消防の確認と、飲食店なら保健所の確認は欠かせません。 - STEP4:基準を図面に組み込み、見積もりを出す
内装制限・非常用照明・消防用設備・厨房のダクトを図面に書き込みます。 - STEP5:必要な申請と届出を行う
200㎡超なら消防同意を含む確認申請、市街化調整区域なら都市計画法の許可、県民福祉条例の対象なら着工30日前までの届出を行います。確認申請が不要な場合は、設計者が図面と基準を照らし合わせます。
確認申請は、設計を担う建築士が建築主の代理人として行うのが一般的です。設備やダクトの位置が施工中に変わると、基準との照合がやり直しになります。法人建築の案内で設計から施工までの一貫した対応を掲げる中邑工務店のような工務店であれば、設計で決めた内容をそのまま施工に引き継げます。
6-3. 工事の完了届から開業まで|STEP6〜7
- STEP6:工事を行い、工事完了届を出す
確認申請をした用途変更では、工事の完了から4日以内に工事完了届を出します(建築基準法第87条第1項)。用途変更には完了検査がなく、検査済証は交付されません。 - STEP7:使用開始届と営業許可を経て開業する
富山市では使用開始の7日前までに防火対象物使用開始届を出し、飲食店は営業開始の2週間前までに営業許可を申請します。保健所の確認を経て開業します。
大規模の修繕・模様替の申請では、別に完了検査などがあります。
第7章 古民家の店舗用途変更でつまずきやすい4つの場面
見落としやすい4つの場面を、面積・税・事務所・耐震の順に取り上げます。
7-1. 店舗部分を200㎡以下に収める計画|後から客席を広げると手続きが変わる
確認申請が要らない規模に収めるなら、次の3点を押さえておきます。
- 面積は店舗に使う部分の合計で数える
- 開業後に客席を広げて200㎡を超えると、その時点で用途変更の確認申請が必要になる
- 200㎡以下でも、第3章・第4章の基準は残る
7-2. 住宅用地の特例が外れる場合|土地の固定資産税の扱いが変わる
地方税法第349条の3の2の住宅用地の特例(住宅の敷地の税を軽くする仕組み)は、専用住宅と、居住部分が4分の1以上の併用住宅の敷地が対象です。200㎡以下の部分は、課税標準が価格の6分の1です。併用住宅では、居住割合に応じた率(4分の1以上2分の1未満は0.5、2分の1以上は1.0)を敷地面積に掛けます(地上5階以上の耐火建築物を除く)。
判定は毎年1月1日時点のため、古民家をすべて店舗にすると、翌年度から特例が外れて税額が上がることがあります。
7-3. 事務所として使う場合|確認申請が不要でも用途地域・消防・大規模改修は別に確かめる
事務所は特殊建築物ではないため、住宅からの用途変更に第87条の確認申請は要りませんが、次の点は別に確かめます。
- 用途地域: 第一種低層住居専用地域では兼用住宅の範囲に限られる(3-1)
- 消防法: (15)項で、消火器は延べ300㎡以上、自動火災報知設備は1,000㎡以上、防火管理者は50人以上が目安
- 大規模改修: 主要構造部の過半を直せば確認申請が必要(3-5)
7-4. 耐震は用途変更だけでは求められない|それでも店舗として検討したい理由
既存不適格の古民家でも、構造の規定は用途変更だけでは今の基準に合わせる対象になりません(2-2)。ただ、店舗は不特定の人を迎える建物です。床や壁を開ける時期に耐震の診断や補強を検討すれば、開けた部分をもう一度壊さずに済みます。補強が大規模の修繕・模様替に当たるかも確かめます(3-5)。
診断法や補強の方法は、[[伝統構法の古民家で耐震補強を考えるときの診断法と費用]{.underline}](URL未定:記事格納/伝統構法_耐震補強_費用.md の公開URL)で扱っています。
第8章 古民家を店舗にする用途変更で寄せられる4つの疑問
計画の段階で出やすい4つの疑問に、ここまでの内容を踏まえて答えます。
8-1. 「自宅の一部を小さな店舗にする場合も、用途変更の手続きは必要ですか?」
確認申請は店舗部分が200㎡超の場合に限られます。物販店でその部分が10㎡以内なら、特殊建築物にも当たりません。消防法でも、住まいより小さく50㎡以下なら一般住宅の扱いです。ただし、用途地域の兼用住宅の条件や営業の許可、各種の基準は別にかかります。
8-2. 「古民家を宿にする場合も、200㎡の基準は同じですか?」
国土交通省のパンフレット(2019年)のとおり、ホテルや旅館も特殊建築物で、200㎡超の用途変更で確認申請が要る仕組みは同じです。ただし、法第27条の緩和に警報設備の条件が付くなど、寝泊まりする用途は店舗より基準が厳しくなります。旅館業法の許可も別に要ります。
8-3. 「確認申請の審査には、どのくらいの期間がかかりますか?」
建築基準法第6条第4項では、建築主事が審査する場合、特殊建築物の確認は申請の受理から35日以内に行うと定めています。図面の修正があれば、その分延びます。申請の前には、現況調査や事前相談の期間もかかります。
8-4. 「富山市八尾町の古民家を店舗にする場合、市街化調整区域の許可は必要ですか?」
5-1のとおり、旧八尾町の区域は線引きのない富山南都市計画区域に統合され、市街化調整区域はありません。この区域では都市計画法第43条の許可は通常問題になりません。店舗部分が200㎡を超える用途変更の確認申請は、都市計画区域の外でも必要です。所在地の区域と用途地域は、富山市で確かめておく必要があります。
第9章 図面の線を1本引く前に|古民家を店舗へ用途変更するために

間仕切りの線を1本動かすだけで、店舗部分の床面積は変わります。平面図で厨房の壁を50cmずらすと、店舗部分が200㎡を超えたり、消防の50㎡の判定をまたいだりすることがあります。面積を決める線は、工事が始まってからでは引き直しにくいものです。
確かめる相手は窓口ごとに分かれます。建築確認を扱う自治体では、200㎡超の用途変更、2025年からの大規模の修繕・模様替、既存不適格で今の基準に合わせる規定が論点です。消防では住宅併用の判定や消防設備と使用開始届を、保健所では工事前の相談と営業許可を扱います。
都市計画と条例の担当では、市街化調整区域の許可や県民福祉条例の届出を確かめます。この4つの窓口に出す図面は、どれも同じ一枚です。
法規チェックを設計の出発点に置く工務店、株式会社中邑工務店
株式会社中邑工務店では、図面を描き始める前に、法規の確認(法規チェック)と設計の事前相談を行っています。たとえば、店舗にする部屋とその床面積、用途地域と区域区分、確認済証・検査済証の有無、消防設備が必要になる条件、厨房の排気を通す経路などを確かめます。
工事の日程は、事前の打ち合わせや現地調査をもとに、営業や住まいを続けながらの工事かどうかを踏まえて組み立てます。開業した昭和45年(1970年)から続く会社で、本社は富山市八尾町杉田にあります。手がける仕事は、古民家再生、リフォーム、注文住宅にわたります。
同じ座敷でも、客席にするか厨房にするかで、壁と天井に求められる材料から違ってきます。
