2019年6月25日に施行された建築基準法の改正で、用途変更の確認申請が必要な特殊建築物の規模は、100㎡から200㎡に引き上げられました。住宅だった古民家を200㎡以下のカフェに変えるなら、用途変更の建築確認は要りません。
ただし国土交通省は、建築基準法や消防法への適合は、手続きの有無と関係なく求められると明記しています。富山市保健所も、施設基準に合わない施設には営業許可が出ないとして、工事が始まる前の相談を求めています。手続きが減っても、住宅を飲食店の基準に合わせる工事は減りません。
古民家カフェの内装工事費用は、梁や照明より、厨房や給排水、住まいとの区画など客席から見えない部分で差がつきます。スケルトンにする範囲、厨房設置前に確認する基準、居心地と客単価につながる客席と動線の設計を順に取り上げます。富山の冬の工事と、2026年9月時点の補助金・融資まで整理します。
第1章 古民家カフェの内装工事費用が一般の店舗より読みにくい3つの理由
同じ広さのテナント店舗と比べて、古民家カフェの工事費用は相場から見通しを立てにくいものです。その理由を3つに分けて見ていきます。
1-1. 住宅として建った古民家を飲食店の基準に合わせる工事が加わる
古民家は家族が暮らす住宅として建てられ、台所は家庭用で、店の手洗い設備も住まいと店を分ける壁もありません。飲食店として営業するには、保健所の施設基準や消防法に合わせる工事が必要です。
見た目の改装だけで予算を組むと、許可に必要な設備の分が足りなくなります(基準は第4章)。
1-2. スケルトンでも居抜きでもない|住宅のままの古民家という物件の状態
店舗の物件は、一般に「スケルトン」か「居抜き」かで工事の量を見積もります。スケルトンは仕上げと設備を取り払った構造だけの状態、居抜きは前の店の内装や厨房設備が残った状態です。
住宅のままの古民家は、そのどちらにも当てはまりません。畳や家庭用の台所が残り、飲食店の設備はほぼゼロから入れる一方、梁や建具のように残す価値のあるものもあります。どこまで剥がすかが、内装の費用を左右する分かれ目です(第3章)。
1-3. 解体後に傷みが見える|古民家カフェの見積もりが2段階になりやすい理由
雨漏りの跡や床組の腐れ、シロアリの被害は、天井や床を開けて初めて分かることが多くあります。そのため古民家カフェの見積もりは、解体前の概算と解体後の確定額の2段階で考えるのが現実的です。傷みが見つかった場合の扱いを概算の段階で決めておくと、改修の途中で迷いません。
第2章 開業費用の統計で見る古民家カフェの内装工事費用|7つの工事区分と内訳
開業にかかる費用の公的な統計を手がかりに、内装工事費用の中身を7つの工事区分に分けて整理します。
2-1. 日本政策金融公庫の調査に見る開業費用|平均975万円・中央値600万円
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。分布を見ると、「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、合わせて4割を超えます。
ただし、この数値は回答2,165社の全業種の平均で、「飲食店・宿泊業」は14.5%にとどまります。飲食店や古民家に限った相場ではなく、内装工事費の内訳も公表されていません。店の予算は、次の工事区分ごとに積み上げて考えます。
2-2. 解体・仮設から厨房設備まで|内装工事費用を7つの工事区分で分ける
工事を次の7つに分けると、見積書と照らし合わせやすくなります。
| 工事区分 | 主な内容 | 古民家で増えやすい理由 |
|---|---|---|
| ①解体・撤去・仮設 | 畳や住宅設備の撤去、廃材処分、養生 | 残す部材を手で取り分ける |
| ②構造補修・耐震 | 床組や柱の補修、耐震補強 | 解体後に傷みが見つかる |
| ③断熱・建具 | 床・壁・天井の断熱、建具の調整 | 外気に近い床下が多い |
| ④内装仕上げ | 床・壁・天井の仕上げ、カウンター | 残す梁や土壁との取り合いに手間がかかる |
| ⑤給排水・衛生 | 厨房の給排水、手洗い設備、トイレ、グリストラップ(排水から油脂を分ける装置) | 住宅用の配管では足りないことが多い |
| ⑥電気・ガス・空調・換気 | 業務用機器の電源、照明、厨房の排気 | 住宅の電気容量では足りない場合がある |
| ⑦厨房設備・家具 | 業務用冷蔵庫・シンク・加熱機器、家具 | 機器業者との分担を決める必要がある |
店舗内装会社の公開情報では、カフェの内装工事を坪単価10万〜60万円程度の幅で示す例が多く見られます(2026年9月時点)。ただし多くは根拠の示されていない目安で、古民家で膨らみやすい②③⑤⑥を含むかどうかも異なります。坪単価の相場だけで総額を見込まず、区分ごとの内訳で比べることが大切です。
⑦の厨房機器は専門業者から購入やリースで調達し、工務店が給排水・電気・ガスの接続先を用意する分担が一般的です。機器の位置が早く決まるほど、配管の手戻りが減ります。
2-3. 設計料・許可の手数料・予備費|見積書の外に出やすい費用
工事の見積書とは別に、次のような費用がかかります。
- 設計料:設計を別の設計事務所に依頼する場合に発生する
- 営業許可の手数料:富山市の手数料一覧では、飲食店営業の新規許可は16,800円(2026年9月時点)。許可後の食品衛生責任者研修会の費用は1,000円
- 食品衛生責任者の養成講習:受講料は10,000円(富山市の案内)
- 予備費:解体した後に見つかる傷みへの備え
- 工事中の家賃や開業前の人件費:工期が延びるほど増える
手数料は市のページ間で記載が異なる箇所があるため、申請前に保健所で確認すると確実です。予備費は工事費とは別枠で取っておきます。
第3章 スケルトンから始める古民家カフェの内装|残す構造と剥がす仕上げを決める3つの判断

スケルトンからつくる場合、どこを残してどこを剥がすかで工事費用が変わります。判断のポイントは3つです。
3-1. 天井を剥がして梁を見せるか|小屋組の状態で変わる工事費用
天井板を外すと、屋根を支える梁や束などの骨組み(小屋組)が現れます。高い天井と太い梁は、客席の印象を大きく変える要素です。
一方で、煤の清掃や梁の補修、配線を隠す工夫が加わり、天井がなくなる分は屋根側で断熱します。小屋組の状態を確かめてから決めると、工事費用の見込み違いを防げます。
3-2. 床組と土間の扱い|厨房の水はけと客席の床の高さをそろえる
古民家の床は、畳の部屋と土間で高さが大きく異なります。厨房の床は水はけのよい仕上げが必要で、客席との段差は配膳中のつまずきにもかかわります。どこで高さをそろえるかが、動きやすさと工事の量を決めます。
床の高さを変える工事は、天井の高さの感じ方も変えます。中邑工務店が手がけた黒部市の築200年を超える建物の改修では、床を下げて天井高を確保し、食堂兼社員寮として人が集う空間を整えました。床と天井を一体で考えると、梁の下に座ったときの伸びやかさまで設計に織り込めます。
3-3. 耐震・断熱の工事は内装と同時に|2025年4月からの建築確認の変更点
国土交通省のチラシ(2025年3月版)によると、2025年4月以降に着手する木造2階建てなどの大規模なリフォームには、事前の建築確認が必要です。主要な部分の過半の修繕や模様替えを指し、階段の架け替えや屋根の全面改修が例に挙がっています。
仕上げ材だけの改修や水回りのリフォーム、延べ200㎡以下の平屋は、手続き不要とされています。内装だけのつもりでも、床組や屋根まで直すと手続きが変わる点に注意が必要です。用途変更と重なる場合の扱いは、設計の段階で自治体の建築部局に確かめておくと安心です。
耐震補強や断熱の改修は、床や壁を開ける内装工事と同時に行えば、解体と復旧が一度で済みます。
第4章 厨房設置の前に確認する5つの基準|古民家カフェの保健所・消防・用途変更

厨房の工事範囲は、保健所の施設基準と消防・建築の法令で決まります。着工前に確かめたい基準は5つです。
4-1. 着工前に図面で保健所へ事前相談|富山市の案内と営業許可の申請時期
富山市保健所は、施設基準に合わない施設には営業許可が出ないとして、工事が始まる前の相談を求めています(2026年1月更新の案内)。申請手続きの案内でも、施設の設計図面などを持参して事前に相談するよう示されています。
営業許可の申請は、営業開始予定日の2週間程度前までが目安で、基準を満たしていると確認されれば数日以内に営業を始められます。富山市以外では県の厚生センターが窓口で、高岡厚生センターは1か月前までの手続きを求めています(2026年7月更新)。物件の所在地で窓口と目安が変わります。
4-2. 厨房の床・壁・換気と手洗い設備|施設基準が給排水の工事範囲を決める
富山市が公開している保健所の共通基準では、主に次の点が求められています。
- 床・内壁・天井は、清掃や消毒がしやすい材料にする
- 床は水を通さない材質とし、排水をよくする
- 内壁は、汚れやすい高さまで水を通さない材料で腰張り(壁の下部を別材で張ること)にする
- 作業場所の真上は、結露しにくく換気できる構造にする
- 流水式の手洗い設備を必要な数設け、水栓は洗った手を再び汚さない構造にする
- 使い方に合った大きさと数の洗浄設備(シンク)を設ける
古民家の畳や土壁をそのまま厨房に使えないのは、これらの基準があるためです。床と腰壁の張り替え、排水の勾配、手洗いとシンクの給排水が、厨房の工事範囲を決めます。シンクの槽数などは公開資料に数値がないため、事前相談で確認します。
喫茶店営業などの簡易な営業には一部緩和があり、井戸水を使う場合は12項目の水質検査が必要です。
4-3. 住まいとの区画とトイレ|住居を残したまま古民家でカフェを営む場合
同じ基準では、住居など食品を扱わない部屋が同じ建物にある場合、それらと区画することが求められます。住まいの一部をカフェにするなら、間仕切りや扉の工事が必要です。
トイレは従業者の数に応じ、作業場を汚さない構造と専用の手洗い設備が必要です。位置によっては新設したほうが動線を整えやすくなります。
4-4. 用途変更は200㎡が境目|確認申請が要らなくても基準への適合は必要
建築基準法では、飲食店は特殊建築物に当たります(床面積10㎡以内のものを除く)。住宅を飲食店に変える用途変更で、その部分の床面積が200㎡を超えると、建築確認の手続きが必要です。
200㎡以下なら確認申請は不要ですが、導入で触れたとおり法令への適合は求められます。基準に合わない部分は改修で直すことになります。
4-5. 火を使う厨房と消防設備|消火器・自動火災報知設備・使用開始の届出
消防法施行令では、火を使う設備を置く飲食店に、延べ面積にかかわらず消火器具を求めています(2019年10月施行)。調理油の過熱防止装置などを備えた場合は例外です。総務省消防庁は、木造の飲食店から出火した糸魚川市大規模火災を背景に挙げています。
このほか、延べ面積300㎡以上では自動火災報知設備、収容人員30人以上では防火管理者の選任が必要です。富山市では、建物を店として使い始める7日前までに、消防へ防火対象物使用開始届を出します(富山市火災予防条例第71条、手数料不要)。
第5章 居心地と客単価を上げる店舗設計|古民家カフェの動線と客席の3つのポイント

古民家の間取りと梁を生かしながら、居心地のよさと客単価につながる設計を3つのポイントで紹介します。
5-1. 続き間と縁側を客席にする動線|厨房からの配膳距離と回遊の決め方
古民家には、襖で仕切られた和室が並ぶ「続き間」や、庭に面した縁側があります。こうした場所を客席にすると、厨房から奥の席までの配膳距離が伸び、部屋の奥が行き止まりになりがちです。
先に厨房の位置を決め、配膳や会計、トイレへの行き来が客の横を何度も通らないよう、部屋を回遊できる動線をつくるのが要点です。
景色のよい縁側は、厨房から最も遠くなりやすい席です。近くに配膳台を置いて歩く距離を縮めると、提供の速さと席の心地よさを両立できます。
5-2. 座敷・土間・カウンター|滞在時間に合わせて古民家の客席をつくり分ける
靴を脱ぐ座敷は長く過ごす席に、土間やカウンターは短時間でも立ち寄りやすい席に向いています。両方を組み合わせると、客層や時間帯に合わせた営業がしやすくなります。居心地のよい席は滞在を長くし、飲み物や甘味の追加注文につながりやすくなります。座敷を設ける場合は、入口に靴を脱ぎ置くスペースも設計に含めます。
席の数を曜日や時間帯で変えたい店では、動かせる家具が役立ちます。大工が現場で家具を造作する工務店であれば、寸法を客席や通路の幅に合わせてつくれます。中邑工務店では、富山市内の福祉施設で、キッチンの棚を大工の手でキャスター付きの可動家具に仕上げた例があります。
5-3. 梁の陰影を生かす照明と足元の暖かさ|冬も長居できる空間の条件
梁を見せた天井は、光が上に抜けて暗くなりやすい傾向があります。天井に向けて光を当てる間接照明と、卓上を照らす照明を組み合わせると、梁の陰影と手元の明るさを両立できます。
足元が冷える席では、冬に客が長く過ごせません。床の断熱と暖房の位置を客席の配置と一緒に決めると、空間の隅まで暖かさが届きます。
第6章 富山で古民家をカフェにするときに増える3つの工事|雪・凍結・町並み

富山では、雪や寒さ、町並みの基準によって工事が増えることがあります。
6-1. 特別豪雪地帯を含む富山市|冬の工期と入口まわりの雪への備え
国土交通省の指定では、富山県は全域が豪雪地帯です。富山市のうち、旧大山町・旧八尾町・旧山田村・旧細入村は、さらに積雪の多い特別豪雪地帯に含まれます。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、富山の年間の最深積雪は51cmです。
冬は外まわりの工事が進みにくく、開業日から工期を逆算するときは、冬をまたぐかどうかで段取りが変わります。入口まわりは、落雪の位置と雪の置き場を客の出入りと合わせて考えます。
冬の工期の読み方は、雪の多い土地で工事を重ねてきた工務店ほど確かです。特別豪雪地帯の旧八尾町に本社を置く中邑工務店のような工務店であれば、雪の時期を見込んだ工程を組めます。
6-2. 給排水管の凍結対策|床下が外気に近い古民家で厨房の水を守る
礎石の上に柱を直接立てる「石場建て」の古民家は、床下が外気に近い状態です。そのため、床下を通る給排水管が冬に凍りやすくなります。
水が出なければ、その日は営業できません。配管の保温、床下の断熱、水抜き栓の位置を、改修の段階で設計に入れておきます。
6-3. 八尾など景観の基準がある地域|外観の改修で確認する屋根と格子戸
富山市の「八尾地区景観まちづくり推進区域」では、町並みに合わせた景観形成基準が定められています(2025年3月更新の市の案内)。屋根材は黒色を基調とした日本瓦にすること、出入口は格子戸とするよう努めることなどが示されています。
外観の2分の1を超える修繕や色の変更は届出の対象です。町並みの物件でカフェを開くなら、看板や外観を変える前に確認します。
第7章 内装工事費用を抑える4つの方法|古民家カフェで使える補助金・融資と段階的な改修
内装工事費用の負担を軽くする方法を、補助金・融資と、工事を段階に分ける考え方の4つで整理します。制度の内容は2026年9月時点のものです。
7-1. 小規模事業者持続化補助金|開業前は申請できない点と第20回の締切
小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉は、第20回の公募が行われています(公募要領 第8版)。補助の上限は50万円で、インボイス特例や賃金引上げ特例に当てはまると、最大200万円が上乗せされます。補助率は3分の2です。
受付は、商工会議所地区の公募要領では2026年11月5日から12月15日17時まで(予定)で、事業支援計画書の発行受付は12月4日までです。対象経費の例には店舗改装が含まれます。
ただし、申請時点で開業していない創業予定者と、住宅兼店舗の住宅部分は対象外です。すでに事業を営む人の2店舗目やリニューアルで使いやすい制度です。
7-2. 富山県内の空き家・空き店舗の出店補助|市町ごとに異なる対象と条件
富山県の「空き家関係の支援制度一覧表(令和8年7月1日現在)」から、店舗への改修に使える例を挙げます。
| 市町 | 制度 | 補助の内容 |
|---|---|---|
| 氷見市 | 空き家利活用支援事業費補助金 | 店舗などへの改修に2分の1以内(限度額300万円または100万円) |
| 砺波市 | 空き店舗再生みんなでチャレンジ事業補助金 | 改修などの経費の2分の1(限度額200万円) |
| 朝日町 | 起業応援事業 | 住宅を店舗に改装する場合などに2分の1(上限100万円) |
一方、富山市の「空き家再生等推進事業補助金」は、営利活動を目的としない公益的な事業が対象です。営利のカフェは対象外と読めるため、注意が必要です。
富山市の「新規出店サポート事業補助金」は、中心商店街への出店に店舗改装費の2分の1(1階は上限500万円)を補助します。ページの更新が2024年4月のため、受付状況の確認が必要です。どの制度も、工事の契約・着手前の申請が共通の条件です。
7-3. 開業資金の調達と自己資金|公庫の調査に見る借り入れの割合
第2章の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。そのうち金融機関などからの借り入れが平均827万円で、全体の67.9%を占めます。自己資金は平均279万円です。
内装工事の費用の多くは借り入れで用意され、開業後の売上から返されます。工事の見積もりと返済の見通しを並べると、予算の上限が定まります。
7-4. 開業時に必要な工事と後から足せる工事|古民家カフェの内装を段階で進める
営業許可や消防、安全、給排水にかかわる工事は開業前に必要です。一方、座敷の増席や庭の整備、家具の買い足しは、開業後の売上を見てから進められます。最初の予算を必要な工事に集中させると、借り入れを抑えられます。後から足す場所は、最初の改修で配線や配管に余裕を残すと、追加費用を抑えやすくなります。
第8章 古民家カフェの内装工事費用で寄せられる4つの疑問
物件探しから開業までの間に出てきやすい、古民家カフェの内装工事費用にまつわる疑問に答えます。
8-1. 「借りた古民家でも、カフェ用に内装工事をしてよいですか?」
所有者の承諾があれば、借りた古民家でも内装工事はできます。ただし、どこまで工事してよいか、退去時に元に戻す義務(原状回復)をどう扱うかを、契約前に書面で取り決めておく必要があります。設備の撤去費用まで見込むと、退去時の負担が読めます。
8-2. 「古材をカウンターや家具に使うと、工事費用は上がりますか?」
上がる場合があります。古材は、反りや割れの確認、乾燥、寸法を合わせる加工に手間がかかるためです。
カウンターの天板のように、客の手が毎日触れる部位では、材の選び方が仕上がりを左右します。古材を仕入れて売る側の目を持つ工務店では、使える材とそうでない材を工事の前に選り分けられます。中邑工務店のように古材の買取と販売を事業にしている工務店であれば、その目利きを店の内装の計画に組み込めます。
8-3. 「内装工事はDIYで進めて費用を下げられますか?」
塗装や家具の組み立てなど、仕上げの一部はDIYで費用を抑えられます。ただし電気工事には電気工事士の資格が必要で、厨房の床や手洗い設備は保健所の基準を満たす必要があります。許可にかかわる部分は施工会社に任せるのが安全です。
8-4. 「物件探しから開業まで、工事の段取りはどう組めばよいですか?」
次の順番で進めると、手戻りが少なくなります。
- 物件の候補を絞り、建物の状態を確かめる
- プランと概算見積もりをつくる
- 保健所・消防・建築の窓口に事前確認する
- 補助金を申請し、工事契約を結ぶ
- 解体後に見積もりを確定し、施工する
- 営業許可を申請する(富山市は2週間程度前まで)
- 消防へ使用開始届を出す(富山市は7日前まで)
- 施設の確認を受けて開業する
工期が冬をまたぐかどうかで、日程は大きく変わります。
第9章 工事費は客席で回収する|古民家カフェの内装工事費用を開業後の売上から考える

多くの開業者にとって、内装工事費用は開業後の売上から返していくお金です。返す力は、客席で過ごす時間の心地よさと、許可を得て休まず営業できることの両方から生まれます。
古民家カフェの費用は、役割の違う工事に配られます。一つは、厨房や給排水、住まいとの区画、消防設備など、店として営業できる状態にする工事です。もう一つは、梁や照明、客席の種類と動線など、長く過ごしたくなる空間をつくる工事です。
富山ではさらに、凍結対策や断熱、雪を見込んだ工期など、冬を越すための工事が加わります。見積もりは解体の前後の2段階で固まり、補助金は着手前に当てはめます。坪単価の相場より、この配分を物件ごとに確かめることが、予算を守る近道です。
古民家の再生と商業施設の建築をあわせ持つ工務店の店舗プランニング|株式会社中邑工務店
株式会社中邑工務店は、公共施設や福祉施設、商業施設など、用途の異なる建物の設計から施工までを一貫して手がけています。あわせて、古い建物の風合いを残しながら耐震性や断熱性を高める古民家再生にも取り組んでいます。
店舗のプランニングと見積もりは無料で行っています。ヒアリングで業態や席数の希望、開業の時期を聞き取り、厨房の位置と客席の配置、残す梁と剥がす仕上げの区分を案にまとめます。見積もりでは、工事の費用と工期を説明します。
本社は富山市八尾町杉田にあり、開業は昭和45年(1970年)です。店舗や施設のほか、注文住宅とリフォーム、土地・空き家の販売も扱っています。
同じ梁の下でも、厨房の置き場所と席の並べ方しだいで、客が過ごす時間の長さは変わります。
